「大廃業時代」に備えた、事業承継のポイントを解説!
「大廃業時代」というワードがトレンドになっています。新聞やメディアで見聞きした方も多いのではないでしょうか。経営者の平均引退年齢は約70歳といわれていますが、現在の日本は、経営者の高齢化が顕著で2025年までに70歳を超える中小企業経営者が245万人に達するといわれています。2016年の時点で中小事業者数は358万者ですが、その約7割の経営者が70歳を超えるというわけです。さらに、そのうちの約半数にあたる127万者(日本企業の約1/3)は後継者が未定という調査結果が出ています。
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/kenkyukai/hikitugigl/2019/191107hikitugigl03_1.pdf
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/chousa/chu_kigyocnt/index.htm
こうした状況を放置してしまうとトレンドワードになっている「大廃業時代」を迎える、ということなのです。多くの中小事業者が廃業してしまうことにより、日本経済にとって
・優れた技術、サービスの喪失
・雇用の喪失
・取引先の連鎖倒産
・地域経済の停滞
といった悪影響が懸念されるため、後継者問題は国をあげた喫緊の課題となっています。そのため、国は「事業承継・引き継ぎ補助金」といった補助金なども交付しています。補助金についてはこちらの記事もご参照ください。
では、実際に「事業承継」や経営者の引退を考えた場合、具体的にどんな方法を選択することができるのでしょうか。以下にその4つの方法を解説していきます。
1.親族内承継
一番はじめに思い浮かぶ方法ではないでしょうか。経営者自身の子どもが後継者に選ばれることが多いと思います。親族内承継はオーソドックスな方法ゆえ、他者(社内、取引先、金融機関など)からも理解を得られやすいことがメリットと言えます。親族内承継を実施するためには下記のような課題をクリアする必要があります。
- 会社を継いでほしいと思える親族がいること
- 会社を引き継いでほしい親族が承継する意思をもっていること
- 承継予定の親族に経営者としてのスキルが備わっていること
- 株式の譲渡や相続にかかる資金の準備があるか。ない場合、金融機関からの融資等で補うことができるか
親族内承継で大きく問題となるのが、「相続」の問題です。「相続=争族」と言われることもあるように、会社や経営者の財産を相続するにあたり、株式の相続はトラブルになることが多い傾向にあります。特に、会社の業績が良い場合、株式の価格も高くなるため、多くの株式を引き継ぐ後継者が他の相続人よりも優遇されていると思われてしまいがちです。これは、株式自体が現金に直結しない点が理解しにくいことが大きな要因と考えられます。
また、経営者スキルは一朝一夕に獲得することはできないこと、相続税の対策をするためには計画的に株式を贈与していく必要があることなど、事業承継は長い時間をかけてじっくりと遂行していくこととなります。
2.従業員承継
親族内承継の次に選択されやすい方法です。親族内承継と同様、オーソドックスな承継方法ですので、社内外の理解を得られやすいというメリットがあります。また、従業員承継であれば、後継者は社内の業務を熟知しているため引継ぎが比較的スムーズであったり、複数の候補者から後継者を選定できることなどもメリットとして挙げられます。
親族内承継と同様、以下のような課題をクリアする必要があります。
- 会社を任せられる人材が在籍していること
- その人材に会社を引き継ぐ意思があること
- 承継予定の従業員に経営者としてのスキルが備わっていること
- 株式の譲渡や相続にかかる資金の準備があるか。ない場合、金融機関からの融資等で補うことができるか
特に、よく問題になることは後継者に会社の株式を買い取る資金がないことです。一般的な従業員にとって、会社の株式は非常に高価な買い物となることは間違いありません。金融機関から融資を受けられたとしても、当の本人にしてみればそれは「借金」ですので、その重責にしり込みしてしまうケースが少なくありません。
また、従業員が承継することについて反対する親族が出てくる可能性もあります。経営者としてのスキルを身に付けるには時間がかかりますので、中長期的な計画が必要となります。
3.第三者承継
第三者承継はいわゆるM&Aのことで、会社を他者に譲渡することを指します。一昔前まではM&Aは比較的大きな企業との間で行われることが主流で、中小企業には縁遠かったものですが、現在では国も後押しする中小企業の事業承継手段の一つとなっています。事業承継するにあたり、親族・従業員承継ではなく、初めからM&Aを選択する企業も増えています。また、後継者がいない企業と起業志向の若者をマッチングし、経営を引き継いでもらう取り組みなども出てきています。
譲渡先の選択肢が多いこと、経営者教育が不要で短期間で引き継ぐことが可能であることなどがM&Aのメリットとして挙げられます。その一方で、デメリットとして下記が挙げられます。
- 「会社を売却する」ということに対する心理的負担
- 魅力的な会社・事業でないと第三者からオファーが来ない
- 会社がM&Aを検討していることを他者に容易に相談できない
- 従業員が退職してしまう可能性がある
M&Aは従業員にも大きなインパクトを与えることとなります。M&Aについての説明が不十分であれば従業員の離職に繋がる可能性が高くなります。譲受側にとっても、「有能な人材を確保したい」という目的でM&Aを実行するケースも多いですので、有能な従業員の離職を防ぐことも大きなポイントなります。さらに、他者にとって魅力的な会社と思ってもらえるように、事業自体も魅力的なものに磨き上げておく必要があります。
また、M&Aはその性質からトップシークレットで行われることとなります。不用意に社内もしくは社外に漏らしてしまったために、信用不安を引き起こし、結局破談になってしまったケースも存在します。
4.廃業
会社をたたむことですが、「倒産」とは意味合いが大きく異なります。会社の資金にまだ余裕があるうちに廃業を選択することも選択肢として十分にあり得るのではないでしょうか。
最後に
以上、事業承継や経営者として引退する場合にどのような方法があるのかを簡単に解説してきました。会社を存続することは、優れた技術やサービスの継続、雇用の確保といった、経済の観点から重要であることは確かです。
ただ、ご自身がどのようにしたいかを一番大切に考えてほしいと思います。
事業承継に際し、正解はありません。私はコンサルタントとして、「こうするべきだ」と結論ありきで話を進めるべきではないと考えています。たくさんの選択肢、可能性をご紹介し、経営者様にとって何が一番の理想なのかを一緒に考えていきたいと思っています。
事業承継、M&Aについてお悩みの場合は是非、私どもにご相談ください。
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